8人制サッカー

 日本サッカー協会は2011年度からU‐12の主催試合において、8人制以下の少人数制サッカーを導入することを決定した。
 世界各国の育成年代ではすでに少人数制サッカーが一般的だ。少人数制サッカーの導入による具体的な成果は世界各国で着実に現れている。
 すでに世界で成功していることを日本にも取り入れようとしているわけで、そのことに対して異論はないし、導入することで、子どもたちがよりサッカーを好きになり、うまくなるのであれば、何も言うことはない。
 個の強化。子どもたちがサッカーを楽しめる環境を――。こういったJFAが考える8人制サッカー導入の目的を達成させるためのキーワードは「子どもの出場機会を増やす」「ボールタッチ数を増やす」「ゴール前の攻防を増やす」があげられる。さらに「余らせない」ということ。フォーメーションを2‐3‐2でマッチアップさせるのも、そもそも7人制ではなく8人制を導入したのも、余らせないサッカーを行いやすくすることにある。つまりはFW1人に対してDFが2人でボールを奪いにいくようなシチュエーションが起こりにくいようにしたいと考えたからだ。もちろん、2‐3‐2はひとつのフォーメーションにすぎず、相手が3トップであれば、こちらも3バックで対応するのも当然のことと捉えられている。
 現場の指導者たちは、少人数制の導入に対して大きくふたつの視点から不安視している。ひとつ目は、「子どもの出場機会を増やす」どころか、出場機会が減ってしまうのではという意見。今まで11人出場できた子どもが、今度は8人しか出られなくなるというのだ。JFAは、これについて同一チームから複数のチームエントリーを認めることで、これまで11人しか出られなかったのが仮に2チーム出場すれば、8人×2チームの16人が出られるようになると説明している。
  しかし、週末にたくさんの試合が行われる中、日程や会場、チームスタッフの問題などで複数チームを出場させたくてもできないというケースはかなりある。さらに、大会がノックアウト方式であれば、勝利を優先するあまり(育成年代でよくあげられる課題だが)必然的に能力の高い選手が優先されて起用され、最後の5分しか出場することができない子どもも出てくるだろう(今でもそういうケースはある)。全少においても同じことがいえるわけで、今後、各都道府県サッカー協会がどのように日程調整を行い、複数エントリーを認めるという要項に対して、どう対応していくのだろうか。
 これまで行ってきたやり方を変えれば、当然、様々な問題が出る。試合数と会場の問題、審判の確保など……リーグ戦(公式戦)の導入を推進させ、同時に都市と地方、それぞれに生まれた課題をクリアしていかなければならない。そういった問題にJFAと各都道府県が意見交換を積極的に行い、理念を共有した上で各地域の実情にあわせた制度設計が求められるはずだ。
 次に、8人制サッカー導入によって意図したような形(つなぐ)にならないのではないかという点。中盤をとばして、ロングボールの蹴りあいになるという指摘だ。この点について、このロングボールにも、子どもが自分で考えた上での判断なのか、指導者の指示なのかで意味合いも変わる。8人制の目的を理解して、どういうプレースタイルを構築していくのか、指導者の資質が問われるところではないだろうか。
 ヨーロッパにて採用されているオフサイドエリアの導入も提言している。こういった8人制の目的に即したサッカーを子どもたちが行えるようなルール設定を大人たちが整備していく必要がある。
 指導者に8人制の目的や指導法をどう理解してもらうのか。そこには指導者の意識改革も含まれている。そういった内容を指導者講習会で積極的に情報発信していくことが大事だろう。また今回紹介したような講習会と試合をセットにした大会やイベントも方法のひとつではないだろうか。 
 とにかく子どもたちのための少人数制導入のはず。指導者の大半は、少人数制の理念に理解し、その意図には賛成している。ただ、残念ながら現場の環境面の整備が追いついていない。そこをどう調整していくのか。立場を越え、地域を越え、子どもたちのために大人が知恵を絞っていかなければならないだろう。